最後のコト



いつも一緒にいるのに・・・
友達より特別な存在になったのに・・・・



心がみたされない・・・
身体がみたされない・・・







僕は手塚と最後までしたい・・・
だけど、手塚は部活を引退したらって言うんだ。
そんなの待ちきれない。
英二だって、最後までしたっていう。
海堂だって、最後までしたって。
越前だって・・・
僕以外・・・・
手塚は、僕の身体に負担をかけるから最後までしないって。
僕は別にそんなの気にしない。
最後までしたい。
だって、好きだったらそう思うよね?
そう思ってるのは僕だけ?



・・・好きだと思ってるのは・・・・・・僕だけなのかな・・・・・?


「おはよう!」

「おはよう。」
手塚は、いつものように優しく笑って挨拶をしてくれた。

「ねぇ、今週の土曜日って部活無いんだよね?うちに来ない?」

「いいが、欲しい参考書があって本屋に行きたいんだ。一緒に行くか?」

「うん。」




───土曜日

今日は、絶対に最後までするんだ!
と心に決めて、英二に言われた通りラブストーリーのDVDを借りてきた。
昨日、英二にどうしたらそういう雰囲気になれるか聞いたら、ラブストーリーの映画とかを見て
そういう雰囲気になったら、やればいいんだよ。
といわれて早速、今朝借りてきたんだ。
でも、本人に悪気は無いんだと思うけど昨日はぐさりと胸に突き刺さるお言葉も貰った。
『でもさぁ・・・普通付き合ってたら自然にそういう雰囲気になると思うけど・・・。』
それが、ならないから困ってるんだ!
っていうか・・・手塚が決めてるから・・・。
淋しいな・・・繋がる事が出来ないって。



一人で沈んでいるところに、家のチャイムが鳴った。
「はーい。」

「手塚ですが・・・。」

「あ、ちょっと待ってて。今行く。」
僕は、自分でも分かるぐらい手塚の声を聞いただけで元気になって
玄関に向かった。

「お待たせ!参考書買いにいこっか。」

「あぁ。」

「そうそう、英二がね?面白いって言ってた映画借りてきたんだけど一緒に見ない?」
僕より背が高い手塚を見上げた。

「いいが、菊丸のことだから、きっと途中で寝てたと思うぞ」
手塚ってば、稀にこういう面白いことを言うから好きだ。

「あはは。英二のことだからきっとそうだよ。」

僕たちは他愛ない話をしながら、手塚の参考書を買い、家に戻った。





家に戻ると早速DVDデッキに借りてきたDVDを入れ、再生する。
内容は、主人公が女性の本当にラブストーリーだった。
物語は、佳境に入り始め主人公の女性は涙を流しながら嬉しそうに男性にキスをした。

僕も主人公の女性と同じように隣にいる手塚の手にそっと自分の手を重ねようと
指先が触れた瞬間・・・手塚はビクッと手を離し、
「水を飲んでくる」
と言って、下に下りていってしまった。
『なんで・・・それだけで・・・
手なんて、いつ触っても拒まれることなんてなかったのに・・・。』

戻ってきた手塚は、再びテレビに映る映像を見始めた。
物語は進み、主人公の女性は男性とベットの中で抱き合っている。

僕は、再び手塚の手に自分の手を重ねキスをした。
今回の手塚は黙ってキスを返してくれた。

だけど・・・そこから先に進むことは無かった。



「ねぇ・・・手塚・・・なんで最後までしないの?理由は聞いたけど、
そんなの納得できないよ・・・。」
僕は、震える声でそう呟いた。

「何度も言っただろ・・・。好きだから不二の身体を大事にしたいし、
最後までして試合とかがあったら身体に負担をかけるだろ?
だから・・・」
手塚が最後まで言い切る前に、僕は手塚の言葉を制した。

「だけど・・・僕は最後までしたい。身体に負担がかかっても
手塚と一つになりたいと思うことはイケナイことなの?
好きだったら、そう思うのは当たり前な事でしょ?

みんなが当たり前だと思ってる事を、僕らだけ
しないのは、不安だよ・・・・。
手塚は、愛情表現が下手だし・・・・
僕の身体に触れなくなったり、キスしなくなったりすると
もう僕の事は好きじゃないのかなとか、
やっぱり女の子の方がいいのかなとか・・・
僕は、男だから・・・きっと、女の子より性欲は強いんだと思う
だから・・・余計に、いっぱい触れ合って・・・
好きだと言う気持ちを感じたいし
疲れるほど、手塚に抱かれて幸せを感じたいんだ・・・
でも・・・そう思っているのは僕だけなの?」

僕は、今までの想いを全部手塚に浴びせかけた。

「いい加減にしろ!俺だって最後までしたくないわけ無いだろ!
最後までって言っても、入れる行為をしてないだけで
他の事は、してるんだから・・・・それだけじゃ足りないのか?」
手塚も普段の冷静さを無くし、僕に声を荒立てて・・・
でも、最後は冷静さを取り戻したように、静かに言い放った。

「足りないよ・・・手塚・・・最後までしないからだけじゃない。
キスも、抱きしめる事もしなくなった今のままの手塚の態度じゃ心も・・・ 満たされない。
このままじゃ、僕は手塚と一緒に居たい反面・・・一緒に居たくなくなる。
そんなの嫌だよ・・・。」
僕は、徐々に声が小さくなっていくのを止められず、
最後の方は呟いているようだった。

「あぁ・・・そうだな・・・すまない・・・。俺の中で決めたことだから
部活を引退するまでは、最後までしない・・・だけど・・・
もっと、愛情表現をする努力はするから。
それだけじゃ、ダメか?」
そう言って、手塚は僕を抱きしめてくれた。

「ううん。それだけでいいよ・・・十分・・・」
僕は、手塚の胸元で微笑んだ。
手塚に抱きしめられるとドキドキして幸せな気持ちが溢れて来る。
すごく、安心する。

「僕、本当は手塚が居るだけで幸せ・・・」
小さく呟いた言葉は、二人の間で静かに消えていった。




2004.6.18

いかがでしたでしょうか?
今までは、すぐにやってしまって(笑)いたのですが
今回は恋人同士らしい気持ちを表してみました(笑)
好きなのに、最後までできないじれったい気持ち。
好きだから、最後までしたい。
そう思うのは間違っているのか・・・。
最近の(自分の年齢も含まれてしまうのでアレですが)
若モノ、中高生・・・もしくは小学生まで入ってしまう現代の
乱れた世界には、不二が思っているような想いは
無いのかも知れませんが・・・。
ホントはあって欲しいなと思います。

明月春夜