葬儀
「和久さん!!死んじゃ嫌だ!和久さんが死んじゃったら、誰が真下を怒るの?」
俺は泣きながら懸命に笑って努めた。
「青島・・・やっぱり病気には勝てねぇよ。誰も・・・」
病室のベットに和久さんは、弱々しく横たわっていた。
「そんなことない!俺・・・和久さんの事凄く尊敬してる・・・もっと現場で活躍してる
とこが見たいよ・・・」
和久さんの手を握り締めながら、俺は止まらない涙を拭いやっとの思いで伝えた。
「ありがとよ・・・青島・・・ずっと危なっかしい奴だと思ってたけど・・・ちゃんと成長したな・・・
俺は青島の事・・・息子の様に想ってたよ・・・」
和久さんは、微笑みながら目を閉じた。
「えっ?和久さん!ねぇ・・・逝かないで・・・室井さんも警察変えようと頑張ってるし!
それからでも遅くないじゃない!!ねぇ・・・和久さん・・・ねぇ・・・」
傍にいた主治医は和久さんの脈を取り、一言「御愁傷様でした」と告げた。
まだ暖かい手は、和久さんの心音が停止したようには思えなかった。
その日の夜、自宅に戻って来た和久さんに多くの人が手を合わせに来た。
湾岸署の皆はもちろん、本店の室井さん新城さん、警視総監など様々な人が訪れた。
皆驚いてた。
和久さんが、病気で亡くなるなんて思ってなかったから。
警視総監が特に・・・。
「和久・・・どうして死んじまったんだ・・・まだ警察は変わってないじゃないか。
これから、若いもんが変えていく所だったのに・・・。
見届けるんじゃなかったのか?」
溢れる涙を拭う事無く、応える事のない和久さんに尋ね続けた。
「何か・・・応えてくれ・・・和久・・・」
警視総監は、肩を落としがっくりとうなだれて小さい声で呟いた。
次の日の葬儀には、そんなに大きくない葬儀場が沢山の人で埋まり
外にまで多くの人が並んだ。
和久さんがどれだけ皆に慕われて居たのか・・・知った瞬間だった。
警視総監が弔辞を読み、敬礼をした次の瞬間に俺は目を疑った。
警察関係者全員が遺影に向かって敬礼をしたのだ。
遅れて俺もすかさず、敬礼をした。
その姿は、葬儀に参列した人々の涙を誘った。
俺の隣で雪乃さんが小さく呟いた。
「私・・・和久さんの事絶対に忘れない・・・。こんなに立派だった人の事・・・
忘れたくない・・・」
遺影を真っ直ぐ見つめ、何かを決意したように見えた。
「忘れてはいけない・・・和久さんの様な人は、今までの警察には少なかったのだから・・・」
傍に居た室井さんも、相変わらず眉間にしわを寄せながら、そう言った。
「俺も忘れたくない・・・絶対に忘れちゃいけない。
忘れない事が、和久さんの生きてた証だから・・・。」
end
いかりやさん、追悼小説でした。
あんなに、素敵で様々な人たちを笑わせる事が出来たのは
いかりやさんしかいません。
もう、踊るの和久さんは見れないけど、
今まで頑張ってきたからゆっくり休んで欲しいと思います。
御冥福をお祈りいたします。
2004.4.14
明月春夜
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