あなたの声がききたい


「あなたの事が好きです。室井さん・・・・」


俺は、やっと貴方に近付けたと思うから
後ろの座席の室井さんに一言そう告げた。

室井さんは驚いた顔をして、運転している俺を見た。
ルームミラーに写る室井さんの驚いた顔は、眉間にしわを寄せて
困惑した表情にも見えた。


俺は、今にも口から心臓が飛び出ないか
激しく鳴り響く鼓動が室井さんに聞こえないか心配で
室井さんの顔をチラッとミラーで見ただけで
まっすぐ前を見つめる事しか出来なかった。


「青島・・・・本気か?私はキミと同じ男だ・・・。」


緊張して頭が真っ白になる。
室井さんを好きな理由がたくさんあるのに
喉につかえて出てこない。


ただ

「・・・・わかってます」

そう言うのが、精一杯だった。



「私の・・・・・・・・どこが・・・」


全てが・・・。
好きで好きでたまらない

何事にもまっすぐで
部下の事をしっかり考えていて

何よりも目標がある。


そんな、強くて美しい室井さんに惚れた。


だけど、きっかけは夢だった。

昔──
夢を見た


室井さんに恋をする夢

その夢の中で
俺は室井さんを見てる
室井さんを見てると、ドキドキして
わけが分からなくなって・・・思わず「好きです」って言ちゃうんだ。

最初は驚いた顔をしたんだけど
少し笑って俺を受けて入れてくれた

たった一度の夢で・・・室井さんが凄く印象に残った。
室井さんの笑った顔なんて見た事ないのに
夢の中では幸せそうに笑ってて・・・

なんだか、夢から覚めても室井さんに笑って欲しいと思ったんだ。


たった一度の・・・ゆめ・・・・・?

違うな・・・
たった一度じゃない・・・。


俺は、ずっと室井さんを見てた。
だから、こんな夢を見たんだ。

俺はずっと室井さんに憧れてたから
トップにたって、警察を中から変えたいっていう理想に同意してた。

俺も・・・変えたかった。
大きい事件ばかりやらなければいけないと言うのなら
俺は刑事にはなりたくない。

街の交番でもいい・・・一人でも多く困っている人を助けてあげたい
ただ
それだけなのに・・・。
上の人達は許してくれない

だけど・・・室井さんだけは俺に同意してくれた。


そんな
遠く手の届かない存在だった室井さんにいつからか惹かれてた。


でも、ずっと・・・決めてた。


下っ端で室井さんと対等に話すことも出来ない時から
あなたと釣り合える男になったら・・・
「尊敬」とも「like」とも違う「好き」をあなたに伝えたいと・・・。


「俺・・・ずっと前から室井さんが好きでした
でも、下っ端の俺は室井さん相応しくなかった・・・。

やっと・・・あなたの近くに来れた
やっと・・・あなたと肩を並べて歩ける位の所まで来れた。
気持ちを伝えられるようになるまで、長かったな・・・。

室井さんを好きになったきっかけは夢でした。
こんな風に、室井さんに告白するんです。

驚いたような顔をするんだけど
いつも、しかめっ面ばっかりしてる室井さんが
少し笑って、俺を受け入れてくれたんです。

その時見た顔が頭に焼き付いて離れないんです
現実でも、室井さんの笑った顔が見てみたい。
そう思ったのが、きっかけでした。

まぁ、それはきっかけでしかないですけど・・・。

室井さんの近くに来て、
何事にもまっすぐで
部下の事をしっかり考えていて

何よりも目標がある。
そんな、室井さんに惚れたんです。
最初は「尊敬」してるんだと思ってました。

だけど
何かが違う。
室井さんを見てるとドキドキするんです。


「間違ってる」俺の頭の中で警告が鳴り響いていても・・・

止められなかった・・・。


俺は、室井さんが好きです・・・」


「・・・・・」
室井さんは眉間にしわを寄せ、黙ったまま俯いた。

「私も、君と同じように頭の中でサイレンが鳴り響いてた・・・
君に近付いてはいけない。


君に近付くと自分の中の何かが壊れる


そう思っていても・・・君の後ろは・・・後部座席は心地よかった。

私も、君と同じ気持ち・・・かもしれない・・・・・。」

驚きだけが頭の中を掛け巡る。
「え・・・。ホントに・・・?」


そうこうしているうちに、室井さんの家に着いてしまった。

「着きました・・・。」
後部座席のドアを開ける。

「今日、この後予定がなければ・・・寄っていくか?」
室井さんが少し緊張しているように見えた。

「じゃあ、少しだけ・・・」

玄関に入るなり、なんとなく雰囲気に流されて
室井さんと唇を重ねた。
激しく舌を絡め取ると、苦しそうに息をする。

「んっ・・・ふぅ・・・・っ・・・んんっ・・・んっ・・・んっ・・・」
唇を離すと少し呼吸を荒げながら潤んだ瞳で俺を見上げる。

「・・・こんなこと、初めてした・・・自分から誘って・・・キスするなんて・・・」
恥ずかしそうに、目をそらした。

「俺は嬉しいですけど。想像以上に室井さんがエロそうで」
俺はクスクス笑うと、室井さんも少しだけ笑った。

「初めて、笑ってくれましたね。俺の想像通りだ・・・眉間にしわ寄せてるより
全然いいですよ。俺、その顔好きです。」

そう言うと、室井さんは顔を真っ赤にして「私も、君の笑った顔が好きだ」と
そっと、俺の好きな所を小声で教えてくれた。



END

2007.04.22
また、ちょっと違う別の青室告白話(笑)


春夜