欲張り
今は体育委員会で、何の備品を購入するか委員全員で話し合い中だ。
でも、私は七松先輩の事で頭がいっぱいになっていた。
「滝は、欲しいものあるか?」
あなたの心が欲しいなんて…。
「……」
「滝!体育委員の備品で欲しいものはあるか?」
ボーッとしていた私は、反応が遅くなってしまった。
「あっ、えっ、ありませんっ…。」
「いけどんで、ボーッとしてると先に進んでっちゃうぞ!」
「っ…すみません。」
あっという間に、体育委員会の集まりは時間が過ぎ
後半はきちんと話を聞きながら、暴走する七松先輩をなだめて、なんとか私が話をまとめた。
「はぁ…七松先輩の心が欲しいなんて、欲張りにも程がある。」
一人きりの部屋に戻って、つい独り言が小声で漏れる。
「私の何が欲しいって?」
人気が無かったはずの障子の向こう側から、小平太の声が聞こえてきた。
「っ!七松先輩!?」
「滝の様子がいつもと違ったから…様子をみにきた。」
小平太は障子を開けて、腕を組んだ。
「あ…あの…。」
「聞こえた。
私の何が欲しいか…
もう一度言え。」
「…先輩…すみません…」
真っ赤に顔を赤らめながら、下を向いた滝夜叉丸の頬を両手で優しく触れる。
「ほら、私が欲しいなら…自分の口で言え」
「好きです…。
七松先輩…の心を私に貰えませんか…」
「心だけなんて…。滝は、欲深くないな」
滝夜叉丸は心だけでも、欲張りだと思っていた。
「私が欲しいなら、心だけとは言わず
全てが欲しいと言え。」
胸が熱くなり、心の奥から熱いものが溢れてきた。
それは、瞳から涙となって頬を伝う。
「ください…全部。」
「幾らでもくれてやる。
私以外何も要らないと思うくらい
もっと私を欲しがれ。
私の全てを…」
おわり
20110524
春夜
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