本日の活動内容
(体育委員会←金吾視点)


いつものように体育委員会は、先が見えない裏々山の裏山をマラソン中だ。
何十キロ走ったのか僕はすでに息を切らして最後尾からかなり離れて走って…いや速度的には歩いているより遅いかもしれない。

先頭は遥か先を息ひとつ乱すことなく全開の笑顔で走る体育委員長の七松先輩。


その後ろを走っていたハズの滝夜叉丸先輩が、いつの間にか僕の横でペースを合わせていた。


「どした滝ちゃん、ペースが落ちてるぞ!」

滝夜叉丸先輩は周りから自己主張が激しいとか自惚れやとか、きり丸いわく性格はカスだとか言われているけど、僕はそうは思わないんだ。

「どうしたではありません!ペースを少し落としてください!」

こんな離れた場所から先頭に届くくらいの声を出せる滝夜叉丸先輩もすごい。

僕なんて声すら出せる状態ではないというのに。

「金吾、大丈夫か?」

滝夜叉丸先輩だって、いつも気にしている髪型をボロボロにして息も上がっているのに笑顔を見せてくれた。

「…は…はぃ…」
「無理はするなよ」

頭を撫でてくれ、ペースを上げたかと思うと、前を走る時友先輩に並んだ。

「まだいけるか?」
「が…がんばります」
「よし。」

また優しさく笑ったかと思うと

「あ!三之助!どこへいく!」
いつものように無自覚方向音痴の次屋先輩の迷子縄を慌てて引っ張る滝夜叉丸先輩。


「あーもう…七松先輩!!ペース上げないで下さい!!金吾も四郎も限界ですから!!そろそろ学園へ戻りましょう!!」

「そうかー?」
「もう日が落ちてます!!」
「今からが楽しいのになぁ。滝ちゃんが言うなら仕方ないか」


学園の暴君は、不思議なことに滝夜叉丸先輩の言うことはきくみたいで。


「よし、学園まで全力疾走だ!」
いけいけどんどーん!!

その声を、僕は頭の片隅で聞いたような気がするけれど覚えていない。







「ん……あれ…?」
なんだかお腹が暖かい。

「気がついたか?」
「た…滝夜叉丸先輩??」

気が付いたら僕は滝夜叉丸先輩の背中におぶわれていた。

「す…すみません…」
「気にするな。学園まであと少しだからな」

前を見ると七松先輩が三之助先輩と時友先輩を担いで歩いていた。
結局下級生は全滅したようだ。


「七松先輩も…もう少し考えて頂けるといい
んだけどなぁ」


この体育委員会は滝夜叉丸先輩がいないと回らないと思う。

七松先輩が無茶しても、滝夜叉丸先輩がそれを歯止めしてくれる。

後輩が倒れても背負ってくれたり迷子を阻止してくれたり。
何かと面倒をみてくれる滝夜叉丸先輩。


体育委員会は大変だけど僕はこの委員会に入ってよかったと思う。


「滝、大丈夫かぁ?」

無茶なことばかり言って振り回す七松先輩だって、最後はこうやって脱落した僕たちを回収してくれて、担いでくれる優しい委員長だし


なんだかんだ言ってる滝夜叉丸先輩も七松先輩のこと、好きみたいだからこの委員会はうまく回ってるのかな。

「大丈夫ですよ」

だって現に、そう答えた滝夜叉丸先輩は嬉しそうに笑ってるから。

「滝も体力ついたからな」


滝夜叉丸先輩の笑顔に答えるように微笑んだ七松先輩の顔は、僕の初めてみる表情だった。



…見てはいけなかったかもしれないような気がしたのはなんでだろう?


後で次屋先輩か時友先輩に聞いてみよう。


あれ?そういえば七松先輩って、滝夜叉丸先輩のこと「滝」って呼ぶんだ…

ぼんやりとそんなことを考えていたけど滝夜叉丸先輩の背中の熱が気持ち良くて、また僕は意識を手放した。

明日の委員会も頑張らなくちゃ。




end



体育委員会の家族が大好きで書いてみました…
面倒見の良い滝が好きすぎます。

ありがとうございました!
20110412