あまのじゃく
先生が他の誰かの頭を撫でて褒めることは、普通のこと。
それは、は組での日常。
なのに
おれは、それを見ると胸のあたりがチクチクするんだ。
"さすが、は組の学級委員長!"
"喜三太、よくやったな!"
"乱太郎、えらいぞ"
"団蔵、うまくなったな"
"しんべヱ…鼻を拭け"
"土井せんせぇ〜"
しんべヱが土井先生に飛びついて泣くのだってよくあること。
ドクタケの罠から術を仕掛け脱出に成功したいつも通りの帰り道。 は組が土井先生を囲んで。 無事に帰還したは組を先生が褒める。
おれがよく知る光景で。
なんだろう
もやもやチクチク
そんな光景が"嫌"だ。 そんな自分も"嫌"なのに。
その輪から一歩後ろで眺めることにした。 土井先生は全員の頭を撫でて満足そうな笑顔を見せた。
一人輪から離れたここは、手を伸ばすには少しだけ距離がある。
おれは撫でられていないことに気付いて欲しくない気持ちと、気付いて欲しい気持ちが…もやもや。
「きり丸、お前もよくやったな」
そんなことを考えていたら不意に顔を上げた土井先生がまっすぐおれを見てて…すぐにふわりと笑った。
見たことのある笑顔…。
ドキリと心臓がなって なぜかすごく泣きたくなった。
「べ…別にぼくは何もしてないっすよ」
そういって顔を背けたら頭に優しく乗せられた大きな手。
「よくやってたよ」
みんなと同じように撫でられて。 頭からぬくもりが離れたのが少し寂しくて。
そう思ったら
「よーし、みんな学園に帰るぞ」
土井先生の掛け声と共に
おれの肩にふわりと乗る大きな優しい手のぬくもり。
「「はーい!」」
は組の良い子たちは土井先生の号令で学園へ向かいだす。
先頭は庄左ヱ門。 その後ろに、は組の面々が続く。 おれの前を乱太郎がしんべヱの手を引いている。
土井先生は1番後ろ。 で、おれの肩に手を乗せたまま笑顔でその様子を見ていた。
「きり丸」
「…?」
みんなと少し距離ができたころ、名前を呼ばれて土井先生の顔を見上げた。
いつの間にか、心のもやもやはなくなっていて。
「独り占めしたくなったら、いつでも来いよ」
そう言って笑った先生の顔は悪戯っ子のようで。
おれの顔は真っ赤なゆでだこのようだった。
end
土井先生の特別になりたいきり丸と、そんな気持ちに気付いてて嬉しい土井先生。
土井先生は普段からわからない程度にきり丸を特別扱いしていると萌える。
でも一緒に暮らしてたらさ絶対特別扱いするよね?
私が土井先生の立場だったらやっぱりするもん!(なんの立場だよ)
ありがとうございました!
20110402
海
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