言葉ノ魔術
俺たちは、休みの日になると、大体どちらかの家でダラダラしたり
ゲームしたり・・・そんな事をしている。
今日も、いつものように桃の部屋でテレビを見ていた。
「薫、薫!」
あいつは、俺の名前を呼ぶと共に、俺の肩を叩いた。
「ん?」
声のする方に振り向くと。
「愛してる。」
こいつは真顔でそういう事を言う。
「はぁ?」
「だから、愛してるって言ったんだって。」
再び真顔で恥ずかしいことを言った桃の目をじっと睨み付けながら、
「あぁ。そうか・・・。」
と俺は冷たく言い放つ。
言える訳がないだろう。
俺も・・・・愛してるだなんて・・・
そんな恥ずかしい言葉。
「冷てぇな・・・冷てぇよ!たまには、俺の気持ちを伝えといた方がいいかな
と思っていったのに。」
桃は冗談っぽく泣きまねをした。
「言われなくても・・・知ってるから・・・。」
俺は、ボソッと小さく呟く。
桃は泣きまねをぴたっと止めて、いつものようにニッと笑った。
「俺も、それ知ってた。」
俺は赤面した顔を見られたくなくて俯いた。
「好きだよ。薫・・・愛してる・・・」
そう言いながら、優しく俺を包み込む。
「俺も・・・。」
小さく小さく呟いて聴こえてるか分からないけど、それでいい。
だって、桃は俺の気持ちを一番分かってくれるから。
傍にある桃の体から伝わる体温が分かってるよと言うように
桃自身も抱きしめる腕に力を込めた。
END
春夜
2004.4.28
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