HappyHappyBirthday 1


「今日、家寄ってかねーか?新作のゲーム買ったんだ♪」

いつものように海堂をにこやかに遊びに誘っている。

日常茶飯事な光景だ。

「・・・行く」

長い間があいてから返事をする海堂。

これもいつものこと。学校では一緒にいられない分、2人きりの時間を作りたいのは、桃城も海堂も同じ考えだった。

「じゃあ、早速行こうぜ!」

海堂を自転車の後ろに乗せて走り出す。

いつもよりスピードを出しているようだ。

「・・・おい・・・桃、そんなに出して大丈夫か?マンホールには乗るなよ・・・」

「大丈夫だって!安心しろよ、俺ってそんなに信用ないのかな・・・」

前を向いたまま海堂に気づかれないように苦笑いをした。

「・・・信用してないわけじゃねーけど・・・」

桃城がわからないように苦笑いするのと同じく、海堂も後ろで顔を赤らめていた。

「まぁ、とにかく大丈夫だからさ・・・」

「・・・おじゃまします・・・。今日・・・両親は?」

玄関に入ると人数分の靴がなく家の中も静かだった。

「どうぞ・・・。最近さ、うちの親旅行ばっか行ってんだよ。

弟は友達の家にしょっちゅう泊まりに行ってるし、だからここ一週間くらい一人なんだよ」

階段を上がっていきながら桃城はそう言った。

海堂から見えた桃城の背中は少し寂しそうに見えた。

「・・・・そうなのか・・・」

少し遅れて桃城の後ろから階段を上っていく。

「ああ・・・」

部屋に入ると桃城はおもむろに制服を脱ぎ出した。

「おっ・・・お前、なにやって・・・」

桃城の行動に何を勘違いしたのか顔を真っ赤にして、慌てている。

「えっ?着替えてるだけだけど・・・何、赤くなってんだよ?もしかして、エロい事でも想像しちゃった?」

桃城は、赤くなった海堂を小馬鹿にしたようにくすっと笑った。

「っっ・・・うるさいっ!ふざけんな ちげーよっっ!!」

海堂は図星をつかれたかのように、真っ赤になって桃城にくってかかる。

海堂の腕をかわして、エロい奴だなと桃城は更に笑った。

「・・・笑うなっっ!!」

さっきより恥ずかしくなって、海堂は顔を真っ赤にしながら俯く。

「アハハ、だってさ〜」

それだけ言ってまた大笑いし始めた。

「うるさいっ!」

思いきり顔を背ける。

「・・・あれ・・・?」

海堂が背を向けた先には桃城の机があり、その机の端に、何か小さい箱が置いてあることに気づく。

桃城は、笑いながら何か持ってくると言って、部屋から出ていった。

「あっ、ちょっと待て・・・も・・・も・・・っていっちまった」

扉が閉まるのを見てから舌打ちした。

「・・・なんだよ・・・これ・・・。貰い物?やつの物にしては・・・女っぽすぎるし・・・」

海堂の眉間にはシワがより始めている。

そしてこめかみには、筋がよっていた。

「おまたせ〜♪」

「・・・って何してんだよ!!」

素早く海堂の手から綺麗に包まれた小さな箱を奪い取り、後ろに隠した。

「何で隠すんだよ。そんなに見られちゃ困るもんなのかよ?」

桃城の態度に腹を立てる海堂。

「・・・あ・・いや、あの・・別に大した物じゃないんだ・・・」

苦笑いを浮かべながら、笑ってごまかそうとしたが、海堂は許してくれそうになかった。

「・・・大したもんじゃないなら、見せろよ」

海堂の静かに睨むあの目は怖いものがあった。

「あ・・・いや・・・それはちょっと・・・出来ないんですけど・・・」

なぜか、海堂に睨まれると敬語になってしまう桃城。

「言えないのに、大した物じゃねーんだ?・・・隠すって事は、誰かに貰った物なんだろ!?」

静かな家の中に海堂の怒鳴り声が響く。

「いや・・・・貰った訳じゃないけど・・・言えないんだ・・・ハハ・・・」

相変わらず桃城の顔は引きつったままだ。

桃城は一生懸命言い訳を考える。

「・・・っ」

“言えない”と言う言葉に一瞬、海堂は傷ついた表情をする。

「・・・俺はっ・・・俺は、お前にとってどんな存在なんだよっ!」

隠し事をされたくない海堂にとって、桃城の言葉は隠し事をされたと同時に、

裏切られ、そして捨てられてしまうのではないか・・・という不安にかきたてられた。

「っ・・・ごめん・・・」

後ろ手に隠しておいた小さな箱を大事そうに自分の机の上に置いて、海堂を抱きしめた。

「好きだよ・・・薫・・・」

桃城はこれ以上喋らせない様にキスをして口をふさいだ。

「んっ!!・・・・はっ・・・離せっ・・・」

いきなり来られ驚いたものの箱を大事そうに置くのを見た海堂はそれが気に入らなく、桃城を突き放そうとした。

その瞬間、振り払った海堂の手が勢いよく机の上の箱にぶつかり、そのまま床に落ちる。

パリンっと箱の中でものが壊れる音がした。