翼。
「薫・・・今日、一緒に帰ろう?」
部活が終わって着替えている海堂に少し遠慮がちにそう伝える。
「あぁ。」
あからさまに嬉しそうに返事をした海堂は、自分が嬉しそうに返事をした事に気付き、
慌てて、赤くなって口元を腕でおさえた。
そんな、海堂が可愛くて、思わず笑ってしまった。
「笑うなっ!!」
真っ赤になりながらも、必死に反論してくる。
終いには、「行くぞ?」と言って、さっさと自分の荷物を持って部室を出て行ってしまう。
「おい、ちょっと待てよ・・・・」
慌てて、追いかけると外で待っていてくれる。
いつも、そうだった。
今日もそうだ。
一緒に帰るのなんていつ振りだろう。
ずっと、一緒にいる事が無かった。
海堂の事を大切に想っているのに、態度が気持ちに反していた。
海堂と俺の間に引いてしまった線と言う壁は、俺が造ってしまったものだった。
俺が、勇気を持って越えてしまえば、何て事も無い。
簡単に越えてしまえるほどの高さだった。
もう、越えてしまったから大丈夫。
俺の態度は、気持ちに反する事は無い。
『薫を愛してる・・・・・』
この気持ちは変わらない。
あいつが、俺を嫌いにならない以上・・・。
END
番外編。 ってか、続き!?(笑)
帰りがけ、いつも俺達の間には沈黙が続く。
周りから見れば、変わっているかもしれない。
だけど、俺達はそれでいいんだ。
ひそかに手を繋いで、ふと、目が合った時には笑い合えれば・・・・・。
「今日・・・うち寄ってく?」
海堂が、沈黙を破る。
「えっ?いいの?」
海堂は、小さく頷いた。
「じゃあ、行く」
俺が、ニッと笑うと海堂は、俺から目をそらして赤くなった。
「おじゃましまーす。」
「どうぞ・・・・。俺の部屋に行ってろ・・・。」
あぁ。と返事をして、二階の海堂の部屋に向かう。
しばらくすると、海堂がお茶菓子などを持って部屋に戻ってきた。
「これ・・・はい。」
そう言いながら、グラスを渡す海堂の手が震えている。
「ありがとう。」
グラスを受け取って、テーブルの上に置くと震える海堂の腕を掴む。
「っ・・・なに?」
「しよ・・・・・?その為に・・・・部屋・・・・呼んだよね?」
俺が、にっこりと微笑むと、海堂は驚いていたが顔を再び真っ赤に赤面させて、コクンと頷いた。
「・・・・・好きだよ・・・薫・・・・・」
頬にそっと、手を添えて口付けをした。
「・・・・・・・・・・・・・やっと・・・・・・言ってくれた・・・・・・・。」
海堂の瞳には、涙が滲んでいた。
「えっ・・・・・・・?」
俺は、驚いて海堂を見つめた。
「ずっと・・・・言ってくれなかったから・・・・・・俺の事・・・・
もう・・・・嫌いになった・・・・かと・・・・」
海堂は、俯いて泣き出した。
涙が、フローリングの床に痕を残す。
自分が、数週間の間どれだけ、海堂を悲しませていたのか・・・・思い知った。
海堂の気持ちの様に外は、雨が降り出していた。
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