泪-RUI-


なんか最近俺ばかりがアイツを好きな気がする。
社会に出てから余計に感じるようになった。
メールを俺からしか送ってない。
メールを送れば返ってくるけど・・・
決して・・・アイツからは来ない。

会っていても、二人きりでいても愛を紡ぐ言葉はない・・・
もちろん行動もない。

俺ばかりが一人でドキドキして
俺ばかりが一人で嬉しくて
俺ばかりが一人で想ってて


なんか・・・疲れたよ・・・。


想うことも・・・
求めることも・・・
期待することも・・・

ねぇ・・・俺を好きだと言って・・・。


そうすれば・・・きっと元の気持ちに戻れるから・・・。

きっと・・・

冷めた俺の心が元に戻るから・・・。






いつもと同じ朝・・・何も変わらない。
変わってしまったのは俺の心だけ。

「桃・・・俺先に行くけど、夕飯一緒に食べれるから、待ってて?」
薫が玄関で靴を履きながら言う。
「ああ・・・。」俺は歯を磨きながら、そう答える。
「じゃあ、いってきます。」
元気良くそう言って、出て行く薫を俺は見送った。




その日の夜・・・・



「ただいま・・・。」
真っ暗な部屋で薫の声も聞こえず俺は、ソファーに座ってずっと考えていた。
薫が帰ってきた事は、電気を付けられたことで初めて気づいた。
「どうしたの?こんな、電気も付けないで・・・」
薫が不思議そうに俺の傍に座る。
「あ・・・いや・・・考え事してただけ。」
「何か・・・悩み事・・・か?」
「いや・・・なんでもないよ。飯食いに行こうか・・・。」
俺は誤魔化す様にソファーを立つと薫に腕を掴まれた。
「・・・・何?」
「悩み事はちゃんと相談するって・・・俺達が一緒に居るためのルール・・・決めたよね・・・。」
薫が真っ直ぐに俺の目を見つめる。
俺は、薫の瞳を見れなくて・・・目をそらした。
見たら、吸い込まれて泣いてしまいそうだったから。


「好きなんだ・・・こんなに・・・好きなのに・・・薫の気持ちが分からなくて・・・」


俺は薫を抱きしめ、小さな声で呟いた。
「ごめん・・・ちゃんと言わなきゃ分からないよな・・・・俺も桃のことが好きだよ。」

俺の心に熱が戻って、目からとめどなく涙が溢れた。

「ごめんな・・・?桃・・・桃は、ちゃんと言ってくれていたのに・・・・」
薫は、子供をあやすみたいに、俺の背中を優しく撫でた。
俺は、溢れる涙を拭うことなく、ただ・・・ただ・・・薫を強く抱きしめていた。


END

たまには、シリアスにいかがでしょうか?

05.1.17
春夜