あの夏



あの時…
もう少し、俺に理性があれば
海堂を傷付ける事もなかったし
俺の身も心もボロボロにならなかったのに…




「薫…少しだけ…ちゅって…
ここなら、誰にも見られないと思うし…」

部活の帰り、校舎の裏で好奇心旺盛なお年頃の俺は
大好きな海堂に少しだけとお願いをした。
校舎の裏なんて素敵なシチュエーション…誰もが萌える場所だ。

「バカか…お前は少しと言って止まれた試しが無いだろ…」
海堂が半ば呆れ顔で話す。

「そうなんだけどさ…」
そう言いつつ隙を突いて海堂の唇にちゅっと軽くキスをした。
へへっと笑って見せると海堂は諦めて俺に体を預けた。



「ばーか…」



これが…これから起こる非常識な日常の始まりだった。





ん…?あれは…桃城?と…学ラン?

キスしてんの海堂か!?

へぇ〜…














あの日の夜
俺は、神尾に呼び出された。


「お前らさー…学校でキスとか、それ以上とかすんなよ…
周りから見えてるの気付け…。
まぁ、おかげでいい写真が撮れたけど」


神尾がニヤリと笑いながら、俺に携帯の画面を見せた。
そこには、俺と薫がキスしているのがしっかり写っていた。

「なんで…コレ…脅迫のいいネタを作っちまったって事か…。」

「まっ、そんな所か…。
データバラされたくなければ、俺の云う事きいてくれるよな?」

「お前…同類のくせに」
俺が唇を噛み締めると、神尾がクスリと笑った。

「バカか、俺はお前の様なヘマはしない。
同類だからこそ、試したい事がいろいろあるだろ」

「なに…」

「さすがに深司に試すわけにいかないからな。

3週間俺の云う事を聞いて貰う。
そうすれば、お前の前でデータを消去する。」

「マジかよ…。」


「拒否してみろ、青春学園中にばら撒く。
もちろん、海堂も…異様な目で学園中に見られるんだ。
二人は学園にいられなくなるな。
諦めろ。お前は俺に従うしかないんだ…
しかも、期限付きだ。
疲労は激しいかもしれないけどな」


俺は、その日から神尾の奴隷になった。
毎日、薫と別れた後公園に急ぐ。

要求されるのは、パシリの様な事とSEXだった。

今まで薫にも触られた事の無い場所を
無理矢理神尾が開発して行く。

初めて開かれたソコは、ローションを使っても激しい痛みが伴った。
「あ゛ぁっ───ッッ!!痛いっっ!いたっ!!んっぅ…・」

俺が耐えられなくて声を上げると、神尾は慌てて口を塞ぐ。
「ん゛ん──っっ!!!」

そんな事を、繰り返される毎日が続き
一週間になろとした日だった。



この公園の傍は薫のランニングコース。
その日は、何故か公園の中を通ってきたんだ。
暗闇に紛れて、俺は神尾と伊武に攻め立てられ
気絶寸前だった。
その時、俺の視界に薫が飛び込んできた。

「っ……・・」
頭が真っ白になる。
気付かれたくない。
こんな所見られたら一番守りたい人を傷付ける。
こっちを向かないでくれ…。
目を瞑って事に耐えると
足音が聞こえなくなった。

「えっ…も…も…」

薫の声が小さく俺の名前を呟く。
きつく瞑っていた目を開けると、呆然と立ち尽くす薫の姿が視界に飛び込んだ。
あまりのショックからか、薫はその場から立ち去った。
俺には、追いかけたくても追いかけられなかった。
格好もあるが、今追いかけて説明しても結局薫を傷付ける結果に
なるだけだと思ったから…。


「あーあ…・一番守りたかった人を傷付けちまったな。
桃城は今、海堂の真っ白でキレイだった心をズタズタに傷付けて
壊した…。そんな感じか?」

神尾はケラケラと楽しそうに笑った。
伊武は、申し訳なさそうに薫が走り去った方向を見つめていた。

「てめぇ!抜けよ…!
事の発端はてめぇじゃねぇか!!

くそっ…

俺は、何が何でも薫を守りたかった
てめぇからも…。
傷付ける、全てのものから。
なのに…俺が傷付けて…なに…やってんだ…俺は…


ごめん…・・。」

草むらに顔を埋めながら、地面を拳で殴りつけた。
悔しくて、惨めで、何て、バカな事をしてしまったのかと。

「こんな事してる場合じゃないんじゃないの…今すぐ、誤りに行きなよ…ぼそ…」
伊武の言葉に慌てて、制服を着て海堂の家に駆け出していた。
がむしゃらに走って…走って…。

End

上手くまとまってなくてすみません。

2006.11.23
春夜