片翼の罪。-桃城編-


「桃城・・・英語の教科書、貸してくれ・・・。」

普段は絶対と言うほど物を借りに来ない海堂が、最近良く物を借りに来る。

「おぅ!いいぜ。ちょっとまってて」

何かあったのか・・・と思いながら俺は、ゴチャゴチャと色々な物が詰まった机の中から英語の教科書を探し出す。

「はい。でも、最近良く教科書借りに来るよなー。珍しいな?几帳面の海堂が・・・。」

教科書を渡しながら、俺はストレートに聞いてしまった。

「ゴメン・・・。なんか最近、忘れ物が多くて・・・。」

海堂が嘘をついている事は、すぐに分かった。

こいつは、嘘をつくとき、目を見て話さないんだ。

普段は、目を見て話すのに。

「いや、いいんだけど、珍しいなと思っただけ。次から気を付けろよ?」

「ありがとう。」

俺は返事の代わりに笑いかけて、友達の元に戻って行く。



どうして、海堂にあんな嘘をつかせなければ、いけなかったのだろう。

嘘をつかせるほど逢って居なかった訳じゃない。

部活で逢ってるし、廊下でも運が良ければ逢える。

教室だって隣だし・・・。




・・・・・・・・・・。

そういえば、最近、前より一緒に居る時間が少なくなった。

前は、朝、一緒に学校に来て、休み時間となれば、

海堂の教室で授業が始まるギリギリまで一緒に居たりしたのに。


前より、全然一緒に居ない。


淋しい思い・・・させたのかな・・・。


俺は、ストレートに海堂に気持ちを伝えるから、『うるさい』かなと思って

最近は少し控えめにしていた。

前、ケンカをした時、きっと本音が出たんだと思う。

その言葉を言った後、海堂はしまったと言う顔をした。

海堂の口から





『いつも、ベタベタして、好きって言う言葉軽々しく口にしやがって!嘘くせぇ!!』





と言われた。

本当に悲しかった・・・

俺は、思った事を口にして触れたいと思ったから、抱きしめたりした。

そうするのは、海堂の事が好きだから・・・・。

でも、海堂は俺とは違ったんだよな。





自分がそうだからと言って、海堂も同じだとは限らないから・・・・思い込みし過ぎた。

なんか、リズムが狂うと今までの様に・・・・態度も、表情も、SEXも・・・・

全てが上手くいかなくなる。

最近は、うるさい程言っていた、愛を紡ぐ言葉も全く言っていない。

全部嘘っぽく聞こえて、言えないでいる。







俺達の間には、線が引かれている。

引いているのは、きっと俺。

我侭なあいつを受け入れているつもりで、受け入れ切れていない

心の狭い俺の所為・・・・。

あいつを想い過ぎて、周りが見えなくなっている。

だって、一番好きなのは海堂で、これからも一緒に居たいと思っているのも海堂で・・・・。

海堂以上に他の人を愛せる自信も無いのに・・・・・




俺の気持ちは、あいつにとって重過ぎるのかもな・・・・・。




もうすでに、俺の理想はあいつになっている。

あいつの理想も俺であって欲しいと願っていることさえ・・・・・・。

きっと、重い・・・・。



END


はい。なんか、暗くなってしまいました(笑)
でも、まだ続きます(笑)
実は続き物です(笑)
楽しんでいただけるでしょうかねぇ・・・。
海堂視点と桃城視点・・・・そして、続きの・・・・。(笑)
まぁ、お楽しみに♪

明月 春夜
2003.5.22