パソコン室
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「おーい!海堂!」

遠くから聞き覚えのある声が自分自身の名前を呼び振り返る。

「・・・なんだ」

海堂は無愛想に桃城の顔を見た。

「あのさー、選択科目何にしたんだ?それが聞きたくてさ」

それだけのために走ってきたのかと内心呆れたが口に出すのはやめておいた。

「・・・情報処理」

相変わらず単語のみで受け答えする海堂。

情報処理とは所謂パソコンの授業だ。

「まじで!?俺も一緒だよ!やったぜ!うれしいなぁ」

にこにこしながら嬉しそうに話す桃城。

「・・・」

そんな嬉しそうな顔をしている桃城を横目で見ながらまた歩く速度を速めた。

「え、おい!まてよ・・・うれしくないのか?」

駆け足で海堂に追いつく。

「べつに」

言葉ではそういう海堂だが表情はほんのわずかだが嬉しそうな顔をしていた。

分かるのはたぶん桃城くらいだろう。

「なんだよ〜つれないなぁ・・・内心嬉しかったりするんだろ?」

やっぱり聞きたい言葉はある。

「っ・・・うるさい!」

素直になれない海堂は桃城に振り回されているようだ。

「はは、図星なのかぁ?か・お・る♪」

名前の部分だけ海堂の耳元でささやく。

「っだまれ!名前で呼ぶなっ」

真っ赤になりながら手を上げる。

「うをっ!痛っ!!叩くなよ〜。痛いって〜。今ドサクサにまぎれて

グーで殴っただろ!?」

ギャァギャァと遠くまで聞こえる位のうるささだった。

「・・・」

手を耳にあてて「うるさい」のポーズをとる海堂。

「はぁ・・・何か疲れた。とにかくコート行こうぜ」

とぼとぼとコートに向かって歩いて行く桃城。

その後を海堂も追うようにコートへ向かった。

「よーし、今日はここまで」

手塚の声がコートに響く。

後5分程で予鈴がなる。

「海堂、マジ急がねぇと始まっちまうぜ!?

今日からだったよな?選択授業」

いつもより急いで着替えるとまだ着替えている海堂を待った。

「あ、あぁ」

海堂も急いで着替え終わるとバッグを掴みまだ先輩たちが

着替えをしている部室を2人で出て行った。

「おい、この調子じゃ間に合いそうにないぞ?走るか・・・」

言うと同時に海堂の腕を掴んで走リ出す桃城。

「うわっ」

ぐいっと引っ張られてそのまま海堂は手を引かれる形で

既に誰も居なくなった廊下を走った。

「はぁ・・・はぁ・・・なんとか間に合った・・大丈夫か?」

肩で呼吸をしている海堂に訪ねた。

「・・・あぁ」

桃城より一歩遅れて入ったところで丁度チャイムが鳴った。

チャイムが鳴り終わるとすぐに先生が入ってきて席順を言った。

人数が少ないせいか桃城は一番後ろの海堂のとなりの席になった。

「・・・隣?」

席に座る前に桃城の顔をみる。

「良かったよな?隣同士で」

にこっと桃城は笑った。

「・・・」

何か言おうとしたがその笑みをみて押し黙った海堂。

「おら、席につけよー」

先生の声が教室に響く。

「ほら、席に付こうぜ」

海堂に席に着こうと促す。

何も言わず海堂はコクンと頷いてローラー式のイスに座った。

教室の中は生徒と先生の声でザワザワしていて静かとはいえない状況だった。

「なぁ・・・薫・・・」

隣にいる海堂の耳元にイスごと移動してきた桃城は小声で耳打ちした。

「っ・・・なんだよ・・・」

耳に桃城の息がかかり身体がピクンと小さく跳ね上がる。

「あのさ〜・・・ここでしてみないか?ここなら机の下に潜り込めば前から見えねぇし。」

ニヤリと不適な笑みを浮かべて囁いた。

「っは!?何バカ言ってんだっフザケンナ!」

当たり前のことだが、海堂は怒って拒否した。

「頼むから、しよ?一回でいいからこういうスリル味わってみたいんだって!な?」

顔の前に手を合わせてお願いのポーズを取っている。

「いやだ。」

きっぱり言うとそのまま前を向き、先生の話を聞くことに集中しだした。

「しようぜ?な?そんな嫌がらないでさ。キモチのいいことだけするから・・・」